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第20部分

「お前が前に言った通り、俺は自分が被害者だと思って、勝手に決めつけてた。母さんが再婚したこと、どうしても認めらんなくて、でも認めなきゃいけないから無理してそれを受け入れた。受け入れたと思ってたけど、俺は全然、受け入れてなんかいなかったんだ。一昨年まで二人で頑張ってきたのに、再婚したって聞いたとき、俺だけじゃダメなんだって思った。母さんは俺だけじゃ支えきれないって決めつけられたようで、悽くショックだった。家事だって、學校だって、全部母さんのために頑張ってきたのに、それを否定されたと思った。母さんのためだって、俺が勝手に決めつけたことがいけなかったのかもしれない。本當は母さんだって、俺一人じゃ寂しかったのかもしれない。そう思ったら、悽く自分が情けなくなって、そんな風に思いこんでる俺がバカみたいで……、家族には入れないと思ってた。俺だけ、家族にはなれないって思ってたんだ。だったら、裡切られる前に嫌おうと思った。みんな、嫌ってしまえば、後で嫌いって言われても俺は傷つかないから……」

泣きそうになる健人の腕を摑んで、歩は黙って聞いていた。黙って聞いてくれていることが健人にとって、今、一番嬉しいことだった。否定も肯定もしないが、歩がちゃんと聞いてくれていることは見ているだけで分かる。

「でも、母さんとか、義父さんには……、冷たく出來なかった。育ててもらってるからとか、家に住まわせてもらってるから、冷たい態度を取っちゃいけないと思って、出來るだけ普通に振る舞ってた。だけど、お前は……、歩なら嫌っても良いんじゃないかって、歩を嫌ってることで俺は自分を保ってただけなんだ……。謝って済まされる事じゃないって言うのは分かってる。勝手に嫌いって決めつけて、突っぱねて、優しくしようとしてくれてたのを最初から拒んで……。だから、俺はお前に嫌われても仕方ないんだ。嫌われるようなことを、ずっとしてきたんだから」

健人の表情が苦渋に滲んで、目を瞑る。今まで泣いてこなかったせいか、泣こうと思っても涙なんて出てこなかった。泣いて、許される事ではない。泣いても、同情を引くだけだと分かっていても、今は泣きたいと思った。

「謝っても許されないことぐらい分かってる。優しくしてくれたことだって、今になってようやくありがたいと思った。でも、今頃気付くなんて、俺は本當に最低で、どうしようもない奴で……。自分のことしか考えてない、悽く弱い奴なんだ。だから……、嫌いなら嫌いではっきり言ってくれ。じゃないと、俺、分からないから。言ってくれないと、深読みなんか出來ないから、分からない……」

崩れるように蹲った健人に釣られて、歩も一緒にしゃがんでしまう。摑まれている手がとても溫かいのに、ク��椹‘が効いているせいか、とても寒く感じた。何も言ってこない歩に、健人は少しだけ悲しさを覚えた。

數秒間、沈黙する。啜り泣く様な息遣いが聞こえて、歩は健人を見つめた。

「……健人」

名前を呼ぶと、ハッとしたように顔を上げて、健人は歩を見つめる。まっすぐ歩の目を見つめる健人は、不安げで苦しそうだ。こんな時こそ、泣いてしまえば良いのに、健人は泣けずに苦しんでいるようだった。

「健人は俺のこと、どう思ってるの? 嫌い? 好き?」

優しく尋ねられて、健人は唇をかみしめた。好きか、嫌いか、その二択なら健人はすぐに選ぶことが出來る。出來るはずなのに、言葉が出てこなかった。好きと言って、歩に拒否されたらどうしよう。そんな考えが過ぎって、答えることが出來ない。

「……俺は」

一言、だ。たったの2文字を言うだけなのに、こんなにも出ないとは思わなかった。口が渇いて、喉が痛い。フロ��轔螗挨尉@ぎ目を見つめて、健人は息を吸った。

「健人のこと、好きだよ。俺は」

まず、頭に浮かんだのは、空耳かどうか、だった。言葉が頭の中に流れてきたとき、それを情報として捉えることが出來なかった。顔を上げて、先ほど吸った息を吐きだした。言葉と一緒に吐き出す予定だったのに、予定とは全然摺�ρ勻~が聲として出てきた。

「……え」