木の下にあるベンチへツバサが腰掛けた。ちょうど日陰になっていて、吹いてくる風はとても気持ちいい。健人もベンチに腰掛けて、背もたれに體を預ける。こうして、落ち著いて座るのはとても久しぶりのことだったように思う。リビングにいても、部屋に居ても、ずっと緊張して落ち著けなかった。ここに來てようやく落ち著けたことで、健人は大きく息を吐き出した。それと一緒に、もやもやと考えていたことまで、吐息と一緒に消えようとしていた。
「……この前は、ありがとう」
自然とそんなことを口走ってしまい、健人も少し驚いた。ツバサはきょとんとした顔で健人を見てから、「何のことだ?」と尋ねる。先ほど、倒れかけた話をしたというのに、助けてくれたことは忘れてしまっているようだった。
「倒れかけたとき、助けてくれたから。飲み物ももらったし」
「あぁ、あれか。気にしなくていい。飲み物だって、部室から取ってきたやつだから、タダだし」
「……でも、部で使う奴をもらったんだ。さすがに……」
「あんなもん、何十本も置いてあるんだ。1本ぐらいパクったって、バレやしない。もう飲んだんだろ? 気にしたって仕方ない」
はっきりと言われて、健人は黙った。確かにツバサの言うとおりだった。こうして、思ったことをズバズバと言ってくれるツバサは、話しやすいと思った。逆に歩は、考えていることを口に出さないから、何を思っているのか分からない。だから、知らない間に地雷を踏んでしまい、険悪になってしまうのだ。けれど、それは歩だけではない。健人も考えていることを話さないから、歩には気持ちが伝わっていなかった。
それから、すれ摺�い�k生している。
「変なところを気にするんだな、お前は」
「……いや、禮だけは言いたかったんだ。助かったのは、事実だし」
健人は顔を上げて、ツバサにそう言った。ツバサは真面目にそういう健人を少しの間見つめ、プッと噴出すように笑った。數秒間、聲を上げて笑い、目に涙を浮かべながら健人を見た。
「見た目どおり、真面目だな」
それがバカにされたと感じた健人は、ムッとする。助かったから禮を言っただけなのに、バカにまでされることはない。そんな表情を見せると、またツボにはまったようでツバサは笑い始めた。學校にいるときは、寢ているだけの姿しか見たことが無いので、こんなにも感情豊かだったとは知らなかった。
「悪い悪い。良い意味で言ったつもりなんだ。そんな風に禮を言われることは滅多にないから……」
ふと見せた寂しそうな表情に、健人は目を見張った。そんな顔も一瞬にして消え、ツバサは空を仰ぐ。�ん姢瑩eれて、白い肌が露になった。屋內競技をやっているせいか、肌はとても白い。透き通るような肌に見入っていると、「……あっついなぁ」と呟くような聲が聞こえた。
「……え?」
「佐偅�蝦韋頦筏皮郡螭潰俊�
目を向けられ、健人は「買い物に行こうとしてたんだ」と素直に答える。苗字といえど、名前を呼ばれるのは初めてで少しドキッとした。
「買い物? こんな時間に?」
「……家にいても退屈だったから。夕飯の食材も足りなさそうだったし」
「あぁ、買い物って夕飯のか。てっきり、服とかそんなのを買いに行くのかと思ってた。って言うか、何でお前が夕飯の買い物とかに行くの?」
ストレ��趣蕟枻い�堡恕⒔∪摔稀竵I親が旅行に行ってるんだ」と答えてしまう。なぜか、ツバサの前では、素直に言葉が出る。こうして座りながら話していることも、苦ではなかった。
「……へぇ、じゃぁ、今はあの煩いのと二人きりか?」
「そうだな」
一瞬、ツバサから表情が消えたのを健人は見逃さなかった。すぐに健人から目を逸らし、顔を反対側に向ける。煩いのと言い、名前で呼ばないのを見ると、ツバサはあまり健人のことが好きではないようだ。出席番號順に座っていたとき、毎日と言うほど話しかけられ、寢ているのを邪魔されているのだ。嫌っていても仕